年を重ねて心から思います。必要なときに会うべき人に出会い、必要な時に耐えうる試練を与えられ、そしてまた必要な時に必要最小限の言葉に出会うものなのだと。プルースト「失われた時を求めて」はプルースト研究の葉山郁夫先生の講義に参加するのに合わせて読んだのですが本当にそんな幸運としかいいようのない出会い方をしました。

比喩の上に比喩が重なるプルーストの比喩表現の美しさ。永遠にその文章の中に漂っていたいと思うような世界。とはいえ、「失われた時を求めて」を全巻読んでいたら読むべき他の古典が読めなくなるため「失われた時を求めて」は1篇・3篇(総合的な芸術論)・7篇を読むべき、とのこと。

物語の中を右往左往したかと思えば、哲学や宗教まで話題が広がる講師の葉山先生の言葉のいくつかが、ざらざらした心の窪みに入り込んで講義中なのに涙腺が緩んだりした。(涙腺は幼児並みにもろく、いいことではないのかもしれないけど取材中涙腺が緩むことはしばしばです。つられて取材対象者が泣いてしまったりすることもしばしばです。)

以下は自分用の講義メモ。キーワードだけ。徐々に整理したり見直したりします。


 

「アルベルチーノ」がいたからこそ、終生聞くことを辞めないであろう不思議な声が聞こえ、ずっと呼び掛けている

「私」があらゆる恋の中に見出した虚無
恋愛が終わるのは自分が死ぬか相手が死ぬかである

芸術によって実現するであろう約束(芸術に虚無でない何物かがある)
芸術を完成することによって失われた時間と対抗する
自分の生死を越えた、永遠の何物かを残せるのか

作中の地上の鐘=教会の鐘=天の声である。
このまま人生を終えてしまうことへの警笛

STORY HISTRY イストワール(ストーリーでありヒストリー)

有在⇔影shadow
光(存在)⇔闇(非存在)

黄昏のテーマのモチーフで導入している=比喩=アレゴリー

鮮明に見えるけど、次第に影と共に見えなくなる

光の形而上 闇はすべてを消してしまう

レンブラントが闇を取り入れ、絵画はあらゆるものが書けるようになった

参考)アンデルセン「影をなくした男」
影であると同時に分身である

魂の夜 すべてを呑み込んでいく夜
あるものとないものとよく見える
光と闇が二重に見える
この人とあの人の区別すらつかない
陰翳礼讃:夕暮れ→旅人と鬼が行き交う時間

成仏できない死者=鬼
生きている人間と死んでいる人間が自分の傍にいるかもしれない

(柳田のモチーフ)
=遠野物語
=東日本大震災
死者と共に我々は生きている
(日本の民俗学の一つのテーマ)

佐渡の渡りにこまとめてゆき打ち払う影はなし(藤原定家)
↑「影がない」=ありえたもの、ありえなかったものを描写する可能性の文学

逆に言えば、「本当にあったものは何にもなかった」
島崎藤村 千曲川旅情 「ないないづくし」

あったもの=黄昏時

(ありえたものはありえなかったもの)

その人が生きていたらやっていかねばならない
あったものは影になる
影の中に闇の中にこそ真の想像力がある

影と実体はひっくり返っている
影の中に真の存在を見る
本来ありうべきもの 現実はありえなかったもの

ヨシは自殺する=ニルバーナ―=永死(羽生)=永生

黒服=単細胞
青服=生命以前

仏教やキリスト教の先へ行こうとしている
言語を越えたリアリティは文学にしかない

夜 自分で自分の心に全面的に向き合える時間

朝 濃密な瞬間

昼 午後2時 サロン

黄昏 昼と夜を自在に行き来できる時間(あわい)

夜 雑事が全部消える

が循環していく、無為に暮れていく一日。

(文章から味わうべき箇所)

カーテンの光線の明暗
視覚より音の方が先
音は聞こえてくる
心の中の音
直ちに現在と過去を超える
世界が人間が音を発している
父の書斎を部屋にしている
彼女のキスは母親のキスと重なる(←ここは大きなストーリーを追っている部分)
浴室で湯あみを始める音
12時に8時に起きていたらもっと素晴らしい朝だったのに(←厚みがでる)

アルベルチーヌの人間性=過去(バルベックでの恋の渦巻き)
外の天気と地続きになるなど無数の比喩がある
外の生活音(リアリズム)
ヴァイオリンの音がする
天候の変化がひとつの音符から他の音符へ
音符から音符へ世界が音楽へ(レトリック)
オルフェウスの朝(寓話)

生身の人間 快楽が家全体を満たしている
生きていることの素晴らしさ

作家が死ぬのが分水嶺になっている
時がすべてを虚無にしている

 

黄昏

見えていたものが見えなくなる
見えていないものが見えてくる

  • 「とじこめた」←とじこめるではない
  • 逃げ去る
  • 未知・ロマネスクであること
  • アルベルチーヌの中で生きているのは「心の中の月夜の海」
  • 花の長い植物の茎
  • 人間的であることを辞めて植物になり、草や木の生命一般(命一般)
  • 無生物になり、呼吸する域だけになる

舟になる
男女の抱き合うと船になる
生命=海 に漕ぎ出してヴェネツィアにいく
アルベルチーヌは死ぬ
ヴェネツィアに行ってアルベルチーヌを回想する

脱出願望
象徴的死
不死性を獲得すること
人間の生と死の全体を見て、永遠の命を得る
他者のための死
他者の救済のために死ぬ

神秘性 どの宗教でも天上への上昇願望を含む

・天上界 寺社・神殿 神に出会う
魂の高揚があり、ある種のシンボリズムがある

・親鸞「いづれ浄土で会いましょう」
再び地上に舞い戻って人々の救済のために尽くす
(神)キリスト=比喩
仏陀=ひとりの仏陀だった。永遠の仏陀

東洋人の多くはシャーマニズム
プルースト「ケルトの神話はよくわかる」
フランスにおけるケルト
世界の中心(エルサレム・バビロニア)
地下 冥途