「妻のトリセツ」という本が売れているそうだ。夫が新聞の記事下広告を見ながら「買ってこなくては」と呟いた。しかし10年も一緒にいて分からないものはきっと他人が書いた本を読んだくらいでわからないだろうな。そしたら、数日後、息子が「かあちゃん取扱説明書」という本を学校の図書館で借りてきた。息子曰く、「お母さんは怒り出すと手が付けられなくなるから、怒った時の取り扱いに困っている」そうなのだ。なるほど、これには苦笑いするしかない。

大阪に引っ越してきてからすぐのころ、「息子さんのトリセツが欲しい」といわれたことがあった。

赤ちゃんの頃からいたずらが好き。自由人で幼稚園の先生を困らせた。多動ではない。友達とのコミュニケーションも下手ではない。勉強はできる方だ。発想が豊かで私は息子の個性を愛している。それでも耳からの情報を受け取る事と事務処理が苦手。何度もいわないと気が付けないこともある。上記の指摘を受けてから、できるだけ息子に寄り添えるように私の仕事も少しずつ変えてきた。転勤族だからこそ、トリセツがいるのかもしれないとも思った。WISK検査は近くの小児科で紹介状を書いてもらうところから数えると半年待たねばならなかったけれど、大学病院の検査を受け、先日結果をもらった。薬を飲むほどでは全然ない。病名もつかない。それでもものすごく突出した部分と、明らかに苦手な分野があることが分かった。どちらも予想以上に。

夫が義父の葬儀の喪主挨拶で、こんな風に話していた。

父は生前、平日は仕事、土日はゴルフで忙しくほとんど家にいなかった。遊んでもらった記憶もほとんどない。それでも家族のために懸命に働く父親の姿を感じながら育った。成人してはじめてお酒を飲み交わしたとき、とても嬉しそうな父を見て、少し恩返しができたかなと思った。自分も懸命働き、これからは家族を支えることで父に恩返しをしていきたい。

口数の少ない夫が30秒以上語るのを見るのも、夫の涙を見るのもはじめてだった。

ジェンダーというのが本当に考えれば考えるほど分からない。
私はスペックが低いのであれもこれもはできない。夫が安定した仕事をして生活を支え、私は家事と育児と自分で時間の調整のできるライターの仕事をする。子どものことを考えるとこの分業システムは合理的で現状取り得る最善の選択肢かなと思う。とはいえ、片手間で書いているつもりはなく、客観的批判も主観的批判も真摯に受け止め、精進したい。