満員電車に揺られ無機質なビルとビルの谷間で街の風景として生息してみると、心が強烈に人間らしいものを欲してくる。自然と街の一角に何か人間らしいものを見付けたくて探す。あるとは思うが田舎の分かりやすい人間らしさに慣れ切った私にはなかなか見つからない。こんなところに住んでいたら、本屋にレモンを置いておきたくなる気持ちもわかる。わたしなら宇和島ミカンで占められたスーパーの棚に三ケ日ミカンを置いて帰りたい。「満員電車では心のスイッチを切るんだよ」と教えてくれた人がいたなぁと思いだすけど、わたしにはなかなか器用にスイッチは切れなく、切ったら切ったで電車を降りて今度はちゃんとスイッチが入るだろうかと不安になる。

一分一秒でも早く目的地に到達することとか、この人は大丈夫だろうかとか疑いつつ人と付き合うとか(都会にはとにかくいろんな人がいるので)、人間として生きる上では大して重要でないことに心を奪われるのに大変疲れる。

その疲れを補って余りあるほど色々恵まれた環境に感謝してます。
が、今夜はジムに行くほどの元気はなく目もしょぼしょぼなので本読めるほどでもなく、好きなものを観て元気を貰いたい。好きになるとかなり深く長く耽溺するタイプで、エビータ(アルゼンチンタンゴを習い始め、ピアソラを聴くようになったのもこの映画の影響)も恋に落ちたシェイクスピアマレーナもセリフを覚えるくらい好き。どうしようもなく美しくて芯が強くてしたたかで賢い女性に憧れつづける。

※写真は檸檬の舞台である京都ではなく、大阪の江之子島。