先日、友人にとても不思議な場所に連れて行ってもらった。
浅間神社の近くの「日本茶房寿苑」。

御年89歳の女将が40年以上営んでいるという茶房。
メニューは煎茶のみ。カウンターの後ろには所狭しと棚に並ぶ茶器。とにかくすごい量。
出てきたのは、お猪口のような小さな茶器に湯を沸かしていたのに湯気もでないほどの温度の煎茶。

女将は若いころは旅行が大好きで、稼いで、そのお金がなくなるまで茶器を買い求めて全国を旅をしたという。「どう考えても幸せな人生だった」と話す顔は少女のようだ。でも、歳をとり、思うように出かけられなくなり、「最近はつまらない」という。

最近は、二階への上り下りも大変で来年には店を閉めるつもりだという。
いろんなことを忘れるので、接客中に忘れ物を二階に取りにいったらお客さんを待たせていることも忘れて二階でお茶を飲んでいることもあるとか。

「みんな忘れちゃうの。でもね、だから生きていけるんじゃないかな」
…なるほど。深いなぁ。

とりとめのない会話が続く。思い出したように「悪いことするとね、バチってあたるんだよ」といってまたかわいらしく笑った。
一体どんな悪いことをして、どんなバチが当たったのか聞きたかったが、教えてくれそうになかったので聞かなかった。

お菓子とともに3煎出していたというお茶は、今2煎のお茶のみ。
お茶に関しては色々省略してしまっているようで、お茶が往時の美味しさなのかはわからない。でも、彼女の話を聞きたくて来るお客さんが今でもいるのだろう。最近でもテレビで志村けんさんが訪れていたという。普通、町や町にある店は日々刻々と少しずつ変化していく。相変わらず、という店でも、少しずつ店の人の意図が加わって前回訪れた時とは違っている。でもこの茶房は変化をすることを辞めた場所とでもいうのか。頑なに変化をしないと決めた場所というのか。過去へつながる4次元空間というのか。とにかく不思議な場所だった。

静岡市の美和地区で焼かれたというお猪口をお土産に買って帰った。