伊豆の取材の合間にころばし地蔵へ立ち寄ろうと試みる。
風待港として栄えた妻良港。そこには下田同様、漁師が逗留の際利用した遊郭街があったという。風が凪いだら客は出ていってしまうため、岬の上のお地蔵様に旅の無事を祈願する逆で、お地蔵様を転ばして海が荒れるのを願ったという。その遊女に転ばされたお地蔵様が現存するというのでどうしても見てみたく、妻良港子浦地区へ立ち寄った。

子浦は海水浴場もあるものの、メジャーではなく主に漁港として機能している。
対向車とすれ違うのも困難な細い道を岬の先端まで。
途中、漁業のおじさんに道を聞くと、
「その恰好じゃあ、蚊に刺されちまうよ」
といわれた。前の取材の関係で、ミニのワンピに素足。
後ろで嘲笑が起こっていたが、構わず教えられた道を行く。

勝手にきっと小高い丘の上にあるのだから、見るだけ見たら帰ろうと思っていたのが甘かった。行けども行けどもお地蔵様には会えない。強度の貧血のため、気分が悪くなってきた。吹き出す大量の汗。水も持っていない。

心細くなる思いをしながら山道を歩き、あと100メートルという看板に出会う。
そして、ようやく海に出る。
切り立った崖に大地が美しいグラデーションを作っている。
自然の作る美しさ。大地の爆発するエネルギー。地球の生きてきた痕跡。
しばし感動し、立ち尽くす。
しかし、お地蔵様には会えない。
ここで私はエネルギー切れ。朦朧とする意識の中人気のない海岸で倒れても誰にも気が付かれず放置されるだろうな、と冷静な頭で考え、その場を後にした。

今度は貧血を解消してきたら長袖長ズボン、水分を持参して涼しい時間にもう一度リベンジしたい。